ミニコラム 「橋のこころ」
『あさになったのでまどをあけますよ』
2023-03-11
『あさになったのでまどをあけますよ』
荒井良二 偕成社 2011年12月出版
朝がきて、目が覚めて、太陽のひかりをカーテン越しに感じて、まどをあける。
「あさになったのでまどをあけますよ」
どこかのだれかが、まどを開けています。
切り替わって描かれるのは、その人から見える朝の風景。
まどのそとは、いつもとかわらない。
山があったり、海があったり、あるいは街並みがあったり、畑があったり。
晴れているときもあるし、雨が降っていたりもするかもしれない。
そんな、いつもとかわらないその風景が、かわらないままでそこにあることのうれしさ。
その風景を見つめるひとが、確かにそこにいることのうれしさ。
「あさになったのでまどをあけますよ」
あさになって、まどをあける。
あたりまえにそれができることが、どんなにかけがえのないことか。
いま目の前に見える風景、けっしてあたりまえではないその美しさを、あらためて見つめたいと感じました。