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ミニコラム 「橋のこころ」

『てぶくろ』のなか

2023-01-28
先日の大雪のあと、園庭に積もった雪やビオトープにできた氷を、きらきらした瞳でみつめながら、陽の光に透かしたり、トンネルの中でライトを当てたり、思いつかないような視点で楽しむこどもたちの様子に、一冊の絵本が思い起こされました。
『てぶくろ』(エウゲーニー・M・ラチョフ え・うちだりさこ やく 福音館書店 1965年出版)
この絵本は、ウクライナの民話をもとにしています。

雪がつもる深い森のなか、おじいさんがぶくろのかたほうを落としてそのまま行ってしまいました。
するとそのてぶくろに、いっぴきのねずみがやってきて、そこをおうちにすることにしました。
そのあとも、かえる、うさぎ、きつねと次々にどうぶつたちがやってきては、みんながそのてぶくろに入っていくのです。

おじいさんの落としたそのてぶくろが、どうぶつたちを次々と包み込めるほど大きくなり、はしごや扉など家らしく描かれていきます。
そんなに入るわけないよ、というおとなの視点はおかまいなしに、どうぶつたちはてぶくろの中に入っていきます。
そしてどうぶつたちがてぶくろの窓から外のを眺めるその表情や、ふかふかとしたてぶくろの毛皮、そんなものから中がどんなにあたたかいのか、そんなことまで想像がふくらみます。

絵本はこんなふうに、かつて自分がこどもだった頃、その空想の翼が自分をどこまでも連れて行ってくれていたことを思い出させてくれる気がします。