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ミニコラム 「橋のこころ」

『はなをくんくん』

2023-02-20
まだまだ寒い日が続きますが、園庭の木々も少しずつ陽光を蓄えているような気配を感じます。
どことなく、からだの奥底からもあたたかい光がみちてくる、そんな気持ちになれるようです。

そんな冬から春へと移り変わる中、春を楽しみに待つ絵本といえば、この『はなをくんくん』(ルース・クラウス/ぶん マーク・シーモント/え きじまはじめ/やく 福音館書店 19676年出版)がまっさきに浮かんできます。

冷たい雪の降り積もる森のなか、一見しんと静まりかえっているようですが、様々ないきものたちがじっといきをひそめるように眠っています。
やがてくるはずのあたたかい春を心待ちにしていたいきものたちは、ある日めざめると、はなをくんくんさせて雪の中をいちもくさんにかけていきます。

いきものたちがあつまり、そっと雪のなかをのぞきこむと、そこに、春をつげる一輪の花が咲いているのです。

森もいきものたちも、みんなモノクロの濃淡のみで描かれているなかに、その花のあたたかい黄色は、まさにこころまちにしていた春そのものです。
そのあたたかな色は、長く冷たい冬を乗り越えたからこそ出会うことが出来たものなのかもしれないと感じられます。