ミニコラム 「橋のこころ」
『おやすみなさいおつきさま』
2023-09-21
2023年の中秋の名月は9月29日だそうですね。
真っ暗な空にぽっかりと浮かぶ大きなお月さまは、ちいさい人たちにはどんなふうに見えているのだろうと思います。
幼い頃の記憶をたどると、月というあんなにも大きくて夜空に輝くものがあること。
そしてその月が後ろをついてくることが本当に不思議で、つないでもらった手をぎゅっとにぎりしめたまま、何度も何度も振り返ったことを思い出しました。
『おやすみなさいおつきさま』
マーガレット・ワイズ・ブラウン さく
クレメント・ハード え
せたていじ やく
評論社 1979年出版
暖かそうなみどりのおへやは、うさぎの子のおへや。
一日を終え、「おやすみ」をいうそんなひととき、うさぎの子はおへやの中にあるものを、ひとつひとつみつめ、かぞえています。
いつもとかわらず自分をつつんでくれるものたちが、確かにそこにあること、それを何度も確かめるように。
ーー
こねこが にひき
てぶくろが ひとそろい
にんぎょうのいえ
こねずみ いっぴき
ーー
夜、眠りにつくことにまだ慣れていないちいさい人たちにとって、それがどれほど、安心なことか。
灯りが小さくなる。
月は少しずつのぼっていく。
目を開けて、ひとつひとつに「おやすみ」をして、また目を閉じる。
この絵本に込められた願いはきっと、ちいさい人たちが、いつも心から安心して眠りにつけること。
「おやすみなさい」
わたしたちも、絵本のページをゆっくりとめくりながら、きっと同じことを願わずにはいられないのです。