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ミニコラム 「橋のこころ」

『かっこいいピンクをさがしに』

2024-02-24
ふと気が付くと、あっという間に園庭の風景が春めいてきました。
玄関のミモザにふわふわと咲いた鮮やかな黄色。
さくらんぼの木の薄ピンク。
武雄中学校の生徒さんが届けてくださったプランターには、色とりどりのビオラやパンジーが春の色を見せてくれています。

「たくさんのふしぎ」という月刊誌があるのですが、ちょうど今月号が色をテーマにした一冊でした。

『かっこいいピンクをさがしに』(なかむらるみ 文・絵/2024年3月号/福音館書店)は、イラストレーターでもある作者が、とあるきっかけから、ピンクという色をさがして、様々な考察がなされます。

ピンクというと「女の子の色」というイメージがあるように思います。
でもこの本によると、それは1950年代頃のアメリカ文化の影響によるもので、実はほんのここ70年間ほどでできた”見方”だそうです。
例えば平安時代、衣服はとても自由に季節や個性を表すもので、桜の重ねでは濃い赤の上に白い布を着て、その透ける色合いで表したそうです。
とても感性が豊かだと感じます。
また日本以外の国では、ピンクはほかのブルーや赤などと同様、男の子も女の子も着るいろんな色の一色だそうで、女の子の色というイメージがない国もあるそうです。
またある国ではピンクシティと呼ばれる街があり、インドではなんとピンクは火曜日の色というイメージだそうです。

そんな様々なピンクをめぐる旅を経て、作者は最後にこう記します。
ピンクってこんな色という見方をするのではなく、ピンクはいろんな色があるし、どの色も素敵なんだ、そう教えてもらったと。

もともと作者がピンクに思いを巡らせるきっかけとなったのは、「男の子である孫が選んだ濃いピンクのランドセルが理解できない」という内容の新聞記事でした。
ピンク=かわいい=女の子の色。
そういう”見方”にとらわれず、もっと自由に感性を働かせることができるようにしたい。
そうすればきっともっと素敵な世界が見えてくるのだと、この本を読んで感じました。

『ショッキングピンクショック!伝説のファッションデザイナー エルザ・スキャバレリの物語』
(文キョウ・マクレア/絵ジュリー・モースタッド/訳八木恭子 フレーベル館・2018年出版)
この実在のデザイナーの人生を描いた絵本では、どこまでも広がる想像力の種を大事に育てたひとりの女性が、やがて自分のイメージするピンクをさがしもとめる姿が描かれています。

彼女が求めたピンクはこんな色です。
ーー
今までにないあざやかさで、だいたんで、
よくはえて、元気づけてくれる色。
世界じゅうの光や鳥や魚を、
ひとつに集めたような色です。
ーー
そうして彼女が見つけた自分だけのピンク、それは「ショッキングピンク」と名付けられ、多くの人をしあわせにする色となったのです。

ふと外を見ると、自然が見せてくれるその色は、けっしてひといろではないと気づきます。
どの色にも、その色だけの輝きがあり光があり濃淡があることに気づくのです。

そんなふうに、決してひといろではない自分だけの色、自分だけの輝きを見つけられたら。
ちいさい人たちはもちろん、わたしのように”見方”が凝り固まってしまった大人でも。

どんな色だって素敵、だってそれは自分だけの色だから。
そして、みんなが見つけたその自分だけの色を、お互いに「素敵だね」って認め合えたらと思うのです。