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ミニコラム 「橋のこころ」

『ぼく おかあさんのこと…』

2024-05-18
『ぼく おかあさんのこと…』
酒井駒子 文溪堂 2000年出版

うさぎの「ぼく」は考えます。

表紙のように、真正面を向いて腕を組み、じっと黙りこくって。

「ぼく おかあさんのこと… キライ。」

ちょっとドキッとしたのもつかの間、その理由はというと…?

だって

おかあさんはねぼすけだし
ドラマばっかりみて、マンガみせてくれない

「ぼく」のふまんはどんどん出てきます。

はやくはやくっていうくせに、自分はゆっくりしてるし
すうぐおこる

でも、「ぼく」がおかあさんをキライないちばんの理由はというと…

「ぼく」とケッコンできないこと

だそうです。

なんとも愛らしい理由ですが、「ぼく」にとってはいちばん大切なことです。
だから、そんなおかあさんとはお別れしちゃおうと、部屋をとびだしていきます。

そして…
もちろん、ちゃんともどってきます。

ちいさい人は、社会の中でいろんな人やものと出会い、ときに葛藤を感じることで大きくなっていくそうです。

でも安心して葛藤を感じるためには、きっとそこに、自分を絶対的に無条件で愛してくれるひとの存在が必要なのだと思うのです。

見返しいっぱいにも、たくさんのものたちが描かれています。
ロボットやビスケットなど、きっと「ぼく」の身のまわりにあって、もしかしたら、「ぼく」が好きなものたちなのかもしれませんね。

そんなふうにたくさんの人やものに囲まれながら、そして大好きな人のそばで、うさぎの「ぼく」が大きくなっていきますようにと、身近なちいさな人たちに重ねながら読んだ絵本です。