ミニコラム 「橋のこころ」
自分だけの一冊
2022-08-26
朝の登園が少し落ち着いた頃、絵本のろうかに立って書架を見ていると、その前日、子どもたちがどんなふうに絵本を読んでくれたか、その姿が垣間見えるように感じるときがあります。
表紙が見えるように置いていた絵本がなかったときは、誰かが興味をもって手に取ってくださったんだなと嬉しく感じます。
また、一見迷子の絵本のように見えたり、ちいさな絵本が斜めに置かれているのを見つけたときも、よく見ると、子どもたちのちいさな手が本棚に戻そうとがんばってくれた姿が見えるようで、あたたかな気持ちをもらえます。
時々なのですが、おうちの方からお子さんが同じ絵本ばかりをえらんでしまう、ときには同じ絵本がおうちにあるのに、どうしてでしょうかというお声を聞くことがあります。せっかくなら、もっと違う絵本も読んでほしいのにという、おうちの方の思いにも本当に共感します。
でも、どうか安心してください。
子どもたちにとって、自分の知っている大好きな絵本は、とても安心できる大切な存在なのです。だから例えば、一緒に読まれた翌日、朝の登園時にお返しになったばかりでも、帰りにまたその絵本を本棚で見つけると、子どもたちはまるで大好きな人をみつけたときのような喜びと安心感を感じられるのだと思います。
大人も子どもも、安心基地があるからこそ、次の冒険に向っていけるのです。自分だけのとっておきの一冊に出会い、それを何度も読んでもらい、安心感と絵本の楽しさを十分に味わった子どもたちは、もっともっと広い様々な絵本や物語の世界に飛び立っていく準備ができてくるのだと思います。
自分にとってのとっておきの一冊に出会うことができたら、そして大人になってその絵本にもう一度出会ったとき、自分にはこんな素敵な安全基地があったことを思い出し、大きな支えとなってくれることと思います。
そしてその思い出には、「えほんよんで」という度、何度でも何度でも絵本を読んでくれた、大切な人の存在があります。その人に愛されていたという確かな記憶が、大きな力になるのだと信じています。
そしてその思い出には、「えほんよんで」という度、何度でも何度でも絵本を読んでくれた、大切な人の存在があります。その人に愛されていたという確かな記憶が、大きな力になるのだと信じています。
